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今話題の「地政学リスク」とは?意味・具体例・投資家の心構えを解説

Geopolitics

投資の世界において、最近毎日のように見聞きするようになった「地政学リスク」。

文字や世界情勢の動きからなんとなくイメージはできますが、実際に説明しようとすると難しいのではないでしょうか。

本記事では、新米投資家である筆者が勉強したことをまとめるついでに、この地政学リスクの意味と具体的な内容、リスクが起きた時の投資家の心構えについて、皆さんに共有します。

目次

地政学リスクとは?

地政学リスクとは

地政学リスクとは、「その地域で紛争や災害が起きた場合、世界経済や金融市場に与えるリスク」を一言でまとめた言葉です。

正に昨今の、「石油が豊富な中東で紛争が起き、供給が減る不安から原油価格が高騰する」というのが最もわかりやすい例でしょう。

グローバル化した現代社会では、輸出・輸入を通して世界中が繋がっています。
そのため、どこかの地域で発生した紛争や災害は、その国のみならず、その国の生産物を使用している他国にも影響を及ぼします

一口に地政学リスクと言ってもかなり広い意味になりますが、主な問題は以下の4つであることが多いです。

要因具体的に発生する問題
軍事衝突・紛争国境紛争や内戦による物流の停止。
テロ・暴動重要インフラ(港湾・油田など)への攻撃。
外交・通商摩擦輸出入の制限、関税引き上げ、経済制裁。
エネルギー・資源資源国による供給制限や価格操作。

根っこにある共通の問題はいずれも『供給が途絶えてしまう可能性があり、明日以降どうなるかわからない』という不安です。
それが株価や為替の乱高下を招き、やがて物価に反映されて日常生活に影響を来すようになります。


経済を外交カードとして扱う「経済安全保障」という考え方

世界中の国が自国の技術や特産品を輸出して他国と繋がるようになったことで、「経済安全保障」という考え方が生まれました。

経済安全保障とは、「自国産の資源や物資の輸出を制限したり、技術の提供を停止したりして、他国の経済活動や投資環境に打撃を与えて自国を守ろう」という考えです。

ごく簡単に言うと、「直接手は出さないけど代わりに値上げするよ?困るでしょ?だったらそんな危ない事やめてね」ということです。

2026年で見ても、米国が関税を引き上げるという声明を出した後、中国は米国相手への半導体やレアメタルなどの重要資源の輸出を制限するという声明を出しました。
米国・イランの軍事的緊張の高まりの中で、米国の攻撃に対してイランは原油の輸出入の肝であるホルムズ海峡を封鎖すると脅しをかけたことにより、世界的な原油価格の高騰を招きました。

このように、今や地政学リスクと経済安全保障は、軍事力に引けを取らない影響力を持つ外交カードとなっているのです。

「国が繋がれば繋がるほど、豊かになればなるほど、同じ分だけリスクも増大する」ということは頭に入れておく必要があるでしょう。

日本が負っている地政学リスク一覧

日本の地政学リスクは、周りを海に囲まれた島国である点と、周辺国との政治状況に大きく関係します。

代表的なものは以下の6つです。

項目内容懸念事項
対中国①半導体用レアアースの輸入依存
②物流網(台湾近海)の集中
③現地邦人・日系拠点の多さ
台湾海峡が封鎖による供給不足で、物価高騰・エネルギー不足。
また、現地の資産凍結や、現地の日本人の人質化。
対ロシア①北方領土の軍事拠点化
②天然ガス(約1割)の依存。
天然ガス供給停止によるエネルギー価格急騰と経済混乱。領土問題の交渉凍結。
対北朝鮮①頻繁な弾道ミサイル発射
②拉致問題の未解決
③中露との軍事連携強化。
ミサイル落下による海上・航空航路の安全問題。拉致問題の再発。ミサイルデータの共有技術向上による安全保障上の脅威増大。
食糧安全保障①低い自給率(38%)
②家畜飼料の外販依存(75%)
③海上輸送路の一か所集中。
供給網寸断による食品価格の暴騰。肥料・エネルギー代高騰とのダブルパンチ。
国家主導のサイバー攻撃①中・露・朝による技術・機密情報の窃取、システムダウン
②偽情報の拡散。
重要インフラの停止、技術流出。世論操作や選挙介入による社会的不安の増幅。
日米同盟①米国との同盟国としての負担増
自動車・半導体産業への打撃。有事の経費・物資負担、及び敵対国からの攻撃標的化。

サイバー攻撃などは一見地政学リスクとは無縁のように思えますが、イスラエルのCheck Point社が発行するサイバー攻撃に関するレポートで、『攻撃の多くがロシア・中国関連と指摘される』ものがあります。

この両国と国土が近く、表の通りの地政学リスクを抱えている日本は、ある意味で他の国よりも中・露からサイバー攻撃をされる口実が多いと捉えることもできるでしょう。

つまり、これら6項目はそれぞれ独立しているわけではなく、一つが崩れれば他の項目も連鎖的に発生する危険性が高まります

投資家必見!2026年に注視すべき世界の地政学リスク

国同士が繋がり、発展すればするほど多様化し、地政学リスクは増加していきます。

その中でも、2026年で特に投資家目線で注目するべきものは、以下の6つです。

リスク項目2026年の主要シナリオ注視する指標・関連セクター
中東情勢と原油高原油価格高騰による世界中の物価高騰。ホルムズ海峡の封鎖とならなくとも、通航が課金制となってコストが上がる可能性。指標: WTI原油先物、バルチック海運指数
セクター: エネルギー、海運、商社
トランプ大統領11月の大統領中間選挙に向け、「全品一律関税」の導入懸念。また、それ以外にも突発的な関税導入発言の懸念。指標: 米国債利回り(10年)、ドル円相場
セクター: 自動車、機械、輸出関連株
台湾・東アジア安保中国による台湾の「強制的平和統一」への圧力。指標: フィラデルフィア半導体指数(SOX)
セクター: 半導体、防衛、電子部品
供給網の脱中国化「チャイナ・プラス・ワン」の加速。インド・ASEANへの生産拠点シフト。指標: インドNIFTY50、銅・リチウム価格
セクター: 建設機械、プラント、新興国ETF
グローバルサウスの台頭資源原産国が勢力を強めることによる先進国の発言権の低下。指標: CRB指数(商品指数)、現地通貨建債券利回り
セクター: 鉱業、商社、新興国インフラ
ロシア・ウクライナ戦争の長期化侵攻開始から数年が経過した現在も、エネルギー価格や小麦などの食料価格の不安定要因。指標: 天然ガス先物、小麦先物
セクター: 化学(肥料)、電力、農業関連

6つのうちエネルギー問題が半数を占めており、今後は資源やエネルギーの取り合いになる可能性が高いです。

また、最終的には全て物価上昇に繋がりますが、物価上昇を招く理由がそれぞれ異なります。

株式投資で継続的に利益を出し続けようと思うのならば、単に「物価が上がっていて相場が悪い」ではなく「〇〇が悪化した結果として物価が上がっているので、全体相場としては悪いけどこのセクターは強い」という市場分析ができるようになる必要があるでしょう。

地政学リスクにより市場が下落した時の為の6つのメンタリティ

地政学リスクによる市場の急落に直面すると、投資家は「どこまで下がるのか」「いつ戻るのか」という不安と戦うことになります。

ここでは、過去に有事を分析して導き出された以下の3つのメンタリティを紹介します。

  • 過去のデータから導き出された3つの経験則
  • 株価を動かすのは「有事そのもの」より「経済的要因」
  • 有事の際に買われる安全資産:金(ゴールド)と米ドル

順番に見ていきましょう。

過去のデータから導き出された3つの経験則

主要な地政学イベント後の株価を調査したLPL Financial、RBC Wealth Management、Cambridge Associatesなどの複数の海外調査資料を平均すると、底値までの日数、株価の下落率、元の水準に戻るまでのおおよその期間は以下の通りです。

  • 有事発生から底値までの期間は約2〜3週間前後
  • 株価の下落率は1桁台から、大きくても15%程度
  • 暴落した株価は、過去平均で3カ月以内に元の水準を回復する

直近の例で言うと、2020年の米・イラン関係の緊迫化の際は、株価はわずか数日で底を打ち、下げ幅も限定的でした。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻では、株価は10日で底値をつけ、下落率は6.5%でした。それに加え、発生から16日目には既に開戦前の水準まで株価が戻っています。

ただし、この経験則は、「世界経済を揺るがすほどでもない有事である」という条件があります。

実際に世界経済を揺るがした1973年の第1次石油危機(オイルショック)は約5~6年、2008年のリーマンショックは約4年半前後、2020年のコロナショックでは約半年前後と、株価の正常化まで長い期間を要しています。

有事の際は、「これは世界経済を揺るがす問題か」に焦点をあてて情報を集めると良いでしょう。

株価を動かすのは「有事そのもの」より「経済的要因」

株価を動かすのは有事そのものではなく、有事によって引き起こされた経済的要因です。

第1次石油危機(オイルショック)は、第4次中東戦争によって原油高が高騰したことで世界的なインフレを引き起こしました。第4次中東戦争そのものが直接の原因ではありません

リーマンショックでは、低所得者向けのサブプライムローンという金融システムの破綻しましたが、問題はシステム破綻そのものではなく、銀行同士がお金を貸し借りしなくなってお金が循環しなくなったことにあります。

前項でも述べましたが、単に「物価が上がっていて相場が悪い」ではなく「〇〇が悪化した結果として物価が上がっている」という分析ができるようになると、不安に流されることなく投資判断ができるようになるでしょう。

有事の際に買われる安全資産:金(ゴールド)と米ドル

地政学リスクが高まって株価が下落すると、投資家は自分の資産を守るべく、変動率(ボラティリティ)が高い株式などの資産を売却して、安全度が高い資産へ資金を移す「リスクオフ」の動きが強まります。

現在世界中の投資家から特に「安全度が高い」と評されている資産は、金(ゴールド)と米ドルです。

  • ゴールド:特定の国や企業の信用力に依存しないため、「価値がゼロにならない安全資産」と見なされています。
  • 米ドル: 世界で最も流通量が多く、基軸通貨として通貨の中では最も安定していると言えるでしょう。

その他先進国の国債などもありますが、客観的な信用力から見るとこの二つがやはり強いです。

その為この2つは、株式市場が下落局面になった時に避難先として買われやすくなるので高騰し、市場が落ち着きを取り戻すと売られやすくなるので下落するという特性も持っています。

いかに安全資産と言えど、需要が伸びてから買ってしまうと高値掴みの可能性があるので注意しましょう。

「株式を保有する」ということの意味を考える

地政学リスクにより株価の下落が発生したら、これまで見てきた3つの観点から、「今保有している株式が、今回の問題でどのような影響が出るか」を考えます。

例えば、地震や洪水などの自然災害に見舞われた地域が、ビジネスで不可欠な資材の供給元である場合とそうでない場合、株価は全く異なる変動をするでしょう。

そうなった時、保有する先の銘柄が「どういう仕組みで利益を上げるのか」「資材などの調達はどの国のものか」などを把握しておくこと、ウワサやフェイクニュースに流されることなく自信を持って売買判断を下す強い根拠の一つになります。

株式を保有することは、その会社のオーナーになることです。

特に資産を守る意味や配当目的で長期で株を保有する場合、その銘柄のオーナーとして、自分の企業の収益構造は知っておく必要があるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

本記事の内容を簡単にまとめます。

  • 地政学リスクとは、紛争や災害などの問題が起きた場合、世界経済や金融市場に影響を与えるリスク」を一言でまとめた言葉
  • 日本が抱えている地政学リスクは、それぞれ独立しているわけではなく、一つが崩れれば他の項目も連鎖的に発生する危険性がある
  • 株式投資で継続的に利益を出し続けるには、単に「物価が上がっていて相場が悪い」ではなく「〇〇が悪化した結果として物価が上がっているので、全体相場としては悪いけどこのセクターは強い」という相場分析ができるようになる必要がある
  • 地政学リスクによって株価が下落した場合、「これは世界経済を揺るがす問題か」「どの要因で下落しているのか」に焦点をあてて情報収集する
  • 特に長期で株を保有する場合、その銘柄のオーナーとして、自分の企業の収益構造は知っておく必要がある

筆者が勉強したことをまとめる為に作った本記事ですが、誰かの悩みを解決させれたら幸いです。

それでは。

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