会社を出ると、気づけば東銀座のいつもの店へ足が向いています。
東銀座にあるBrewman Tokyo。
私にとってここは、ただコーヒーを飲む場所ではありません。
スペシャリティコーヒーの奥深さを教えてくれた場所であり、人とのつながりの温かさを感じられる場所でもあります。
コーヒー好きになったきっかけ
今から約3年前、ドイツ製の手挽きミル「Comandante C40」を購入したことが、私がコーヒーに夢中になるきっかけでした。
休日になると池袋のALL SEASONS COFFEEへ通うようになり、そこで働いていた一人のバリスタとの出会いが、私のコーヒー人生を大きく変えました。
豆の違い、抽出方法、産地ごとの個性。
質問すると、いつも丁寧に答えてくれ、その時間が私にとって何より楽しいひとときでした。
その後、そのバリスタがBrewman Tokyoへ移ると聞き、私も東銀座へ通うようになりました。
気づけば、この店は私にとって特別な場所になっていました。
「今日はこんな気分なんだけど。」
この店で私が一番好きなのは、メニューではありません。
スタッフとの会話です。
「今日はこんな気分なんだけど、おすすめある?」
そんな一言だけで、その日の気分に合った一杯を提案してくれます。
そして、私が毎回楽しみにしているのは、一杯が出来上がるまでの時間です。
豆を挽いた瞬間に広がるフレグランス。
お湯を注いだ瞬間に立ち上るアロマ。
その香りは、一瞬で店の空気を変えてしまうほど豊かです。
その香りを吸い込んだ瞬間、「今日も頑張ってよかった」と思える。
そんな一杯に、私は何度も救われてきました。
バリスタは、豆の個性を最大限に引き出すため、カップの温度まで細かく調整しています。
一般的にはカップを温めますが、豆によっては、あえて冷やしてからコーヒーを注ぐこともあります。
香りが一気に揮発しないようにするための工夫だと知ったとき、「ここまで考えて一杯を作っているんだ」と驚きました。
一杯のコーヒーは、偶然おいしくなるものではありません。
細かな技術と経験、そして一杯に向き合う真剣さ。その積み重ねが、心に残る一杯を生み出しているのです。
初めてGEISHAを飲んだ日の衝撃
初めてGEISHAを飲んだ日のことは、今でも忘れられません。
カップから立ち上る香りは、それまで私が知っていたコーヒーとはまるで別物でした。
花のような華やかさ。
オレンジやプラムを思わせる果実感。
「これ、本当にコーヒーなの?」
そう思ったほどの衝撃でした。
一口飲む。
「おいしい」ではありませんでした。
圧倒されたのです。
頭に浮かんだのは、「やばいものを飲んでしまった。」という一言だけでした。
でも、本当にGEISHAのおいしさが分かったのは、三回目くらいに飲んだ頃だったと思います。
何度か味わううちに、華やかな香りだけではなく、果実のような甘さや繊細な余韻まで楽しめるようになりました。
あの日の一杯が、私をスペシャリティコーヒーの世界へさらに深く引き込んでくれました。
コーヒーよりも、人に会いに行く場所
「どうして私は、この店へ通い続けているのだろう。」
そう考えたとき、最初に思い浮かぶのはコーヒーではありません。
スタッフの皆さんの笑顔です。
店の扉を開けると、「こんにちは」と自然に迎えてくれる。
その何気ない一言だけで、仕事の疲れが少し軽くなります。
もちろん、コーヒーはどれを飲んでも素晴らしい。
でも、私が何度も足を運ぶ理由は、それだけではありません。
気づけば私は、コーヒーを飲みに来ているというより、スタッフの皆さんに会いに来ているのかもしれません。
おいしいコーヒーは、人が淹れるからこそ、もっとおいしくなる。
私は、この店でそれを教えてもらいました。
おわりに
だから私は今日も、この店へ向かいます。
おいしいコーヒーを飲むためだけではありません。
そこにいる人たちと笑顔を交わし、「今日はこんな気分なんだけど。」と話しかけるためです。
私にとってBrewman Tokyoは、コーヒーを好きになった場所ではありません。
一杯のコーヒーを通して、人とのつながりの温かさを教えてくれた、かけがえのない場所なのです。
だから私は、またこの扉を開けます。