第1回 「これでいいや」じゃなく、「おいしい」を増やしたい。
「今日はこれでいいや。」
そう思いながら料理を作る日はありませんか。
毎日の料理は、献立を考え、買い物をして、後片付けをする。その繰り返しです。
疲れている日は、できるだけ手早く済ませたくなるのも当然だと思います。
それでも、一口食べた瞬間に「おいしい」と思えたら、その日の食事は少し違うものになります。
私が大切にしたいのは、料理の上手さではありません。
「おいしい」と思える時間です。
飲食の仕事を17年間続ける中で、ずっと考えてきたことがあります。
でも、その答えは、特別な食材でも、高価な調味料でもありませんでした。
料理には、一つひとつ理由があります。
なぜ玉ねぎを炒めるのか。
なぜ最後に味見をするのか。
なぜ同じレシピでも、作る人によって味が変わるのか。
理由を知ると、料理の見え方が少し変わります。
もちろん、レシピはとても大切です。
でも、レシピは誰かの「おいしい」を形にしたもの。
そこに「もう少し甘いほうが好き」「少し酸味があると食べやすいかな」と、自分の好みを重ねていくと、その料理は少しずつ自分だけの味になっていきます。
子どもの頃に食べた料理がおいしいと感じるのは、レシピが特別だったからではなく、その味と、その時間が心に残っているからなのかもしれません。
私は、このシリーズを通して、「なぜそうするのか」という料理の理由を、一つずつお伝えしていきます。
食べる時間は、ほんのひとときです。
だから私は、その短い時間が、「これでいいや」ではなく、「おいしいね」と笑顔になれる時間であってほしい。
そんな「おいしい」が、毎日の食卓に一つずつ増えていったら、私はとてもうれしく思います。
